漢詩を読みたいという方々へ②Q&A編
〇むかし、漢詩の始め方 おぼえがき|東大漢詩研|noteというものを書きましたが、これを筆者である私自身が大幅に加筆修正したものです。
なお、出版社や書店、サイトの紹介がいくつもありますが、個人的な選択によるものです。また漢詩を読むというのは、日本語の訓読を以て読もうとされている方を対象としています。
今回はよくある疑問や私が躓いたところをいくつかQ&A形式でご紹介したいと思います。小難しい話が多いですが、これであなたも漢詩を楽しく読めるようになるかも?????
1、初心者入門から中級者になるまでどういった本を読めばいいでしょうか?
前回の記事をお読みください。
漢詩を読みたいという方々へ① - 松斎録 (hatenablog.com)
2、原文と日本語訳と注釈がありますが、どれも読んだ方がいいでしょうか。また読むべき場合どう読めばスラスラ読めますか?
大体の本に原文、注釈、訳というものが載っていますが、確かに、どうやって読めばいいのかと質問を受けます。まずは原文をざっと見て、訳を読み、その次に原文をもう一回確認、注釈と読んでいくのがよいと思います。すなわち対訳形式で読むわけです。
ただし訳で理解するとしても、人によって訳は全く違うものですし、全面的に頼るのもよくはありません。なので、訳を見る前に一瞬でも原文を全部読みましょう。この練習を何回も行うことで、原文からどんなことが書かれているかを把握できるようになります。
とすると漢字や語彙から意味を見い出せないと思う時があります。ここが難関です。理由を言うと一字一字の他の意味を知らないと躓いてしまっています。ここは漢和辞典を引きながら語感を鋭くしていきましょう。畳韻や双語といった二字で意味を持つ漢字もありますが、基本は一字一字のニュアンスを知っている者勝ちです。
注釈に関しても、漢和辞典を引きながら、こういう意味なのだと理解しながら読むといいでしょう。漢和辞典なしだと最初はとてもきついです。人名や典故も頭の隅に置いておくといいでしょう。難しいことを言ってしまいましたが、最初はちんぷんかんぷんですし、詩人によっては注釈者ですらちんぷんかんぷんということもありますので、ご安心を。
3、読み方のコツを教えてください。
詩の読み方の基本として、五言絶句(5文字×4句)、五言律詩(5文字×8句)といったいわゆる五言の詩では、2+3文字で読みます。七言では2+2+3文字で読みます。(2+2=4文字で読んでもかまいません)この規則を利用しましょう。
絕句二首 其二 唐·杜甫
江碧 鳥逾白, 江碧(みどり)にして 鳥は逾(いよいよ)白く
2 3 2 3
山青 花欲燃。 山青くして 花燃えんと欲す
今春 看又過, 今春 看(みすみす)又過ぎ
何日 是歸年。 何れに日にか 是歸年ならん
楓橋夜泊 唐·張継
月落 烏啼 霜滿天, 月落ち 烏啼いて 霜天に滿ち
2 2 3 2 2 3
江楓 漁父 對愁眠。 江楓 漁父 愁眠に對す
夜半 鐘聲 到客船。 夜半の鐘聲 客船に至る
まずはこれが基本です。基本はこの規則ですから、切れ目のようなものを意識しながら読んでいってみてください。
4、漢詩の本って手に入れにくいですね。どうすればいいですか。
新品でそろえられないのも正直言ってありますね。一般的に買う方法というのは、Amazonやその古書、一般書店があります。
他には日本の古本屋日本の古本屋 / 全国900店の古書店が出店、在庫600万冊から古書を探そう (kosho.or.jp)という全国の古本屋が集まって販売しているところがあります。
また東京を中心に中国書中心の店があります。東京の神保町や京都に多いので、いくつか見てみるといいでしょう。
本というのは本屋やAmazonで手に入れる現代ですが、漢詩の本はおおむね手に入りにくいので、一工夫一苦労要ります。本にこんなに情熱をかけられないという方もいらっしゃるかもしれませんが、意外と楽しいですよ。
5、読むべき本の順序というのをもう少し詳しく教えてください。
基本的には、漢詩入門書→アンソロジー→個別の詩人の詩集という感じに読むとよいでしょう。
大体個別の詩人を読みだすときにちょっと難しさを感じる人が多いようですが、よくわからないのならば、杜甫、王維、李白、蘇軾あたりから読めばいいと思います。読みやすく、親しみやすい詩が多いですので、ぜひご覧ください。
個別の詩人の詩集は岩波書店が多く出しています。岩波文庫や中国詩人選集(品切れ、古書)というシリーズがいいですね。また集英社の漢詩大系(品切れ、古書)もおすすめです。