停雲日録(中国古典詩を読み、作る)

漢詩創作がすきです。中国古典学にも興味があります。

「停雲通信」10号_2025年3月18日

「停雲通信」10号

2025年3月18日

 芥川龍之介の『侏儒の言葉』に、「文章の中にある言葉は辞書の中にある時よりも美しさを加えていなければならぬ」という文章があります。

ある日、七律を作ろうとしているとき、芥川の言葉がありありと思い浮かびました。この言葉は漢詩の話にしても同じではないでしょうか。例えば、『大漢和辞典』や中国の『漢語大詞典』に豊富な語彙が載っていたとしても、そのまま活かすというわけにもいきません。つまり、辞書通りに言葉を使うのは野暮だと皆さんお分かりだと思います。しかし、実際に詩語を使うにしてもどのようにして使うべきかについては、前よりあまり示されていない上に、実際私も示しにくいところがあります。

ただ、一つ言えることは用例をよく見ることに一つ、キーがあります。詩に使われる語彙は時代や詩人ごとにかなり変化しています。その「詩語の系譜」をうまく読み取っていくことが一つ、漢詩を読むコツです。私の場合、系譜を読むうえで力点を置くのが唐代の杜甫、または詩は唐宋のうちの宋代の終わり、つまり南宋あたりの詩をみるようにしています。杜甫は盛唐の大詩人ですが、唐代以前の語彙を学習した上で、特に六朝の『文選』の語彙を応用している点が相当に優れています。また、杜甫以降も相当な影響を与えているので、一つの指標となります。

そしてもう一つ南宋の詩というのは、陸游や范成大、楊万里という詩人が出てくるのですが、北宋から南宋にかけて、江西詩派という杜甫を尊崇する詩人が大量に表れ、その模倣や換骨奪胎が大流行してマンネリズムに陥ったとき、陸游らはどのように詩を作ったのかというのがもう一つあります。ちなみに私の学生時代のテーマでもあり、ここは注目しないわけにはいかないのです。

 つまり、用例を掴むコツとしては、系譜というくらいですから、流れを読み取ること、そして、特定の詩人をサンプルとして基準にすることもありでしょう。以上が私の方法ですがご参考までに。

神保町中国学書店案内~附:神保町周辺の書店~

 

「神保町中国学書店案内~附:神保町周辺の書店~」

神保町中国学書店案内~附:神保町周辺の書店~|

こちらを作者本人(または著作者本人?)が「停雲日録」に転載したものである。

 

凡例


・本書は、神保町を中心に、近隣地域にも広げ、中国関係の本を扱う書店をまとめたものである。とくに中国関係の人文書関連の取り扱う書店を中心に書いている。
・2024年11月8日現在の書店情報であるため、最新の情報は、ネットや店舗にあたって調べられたい。
・西の九段下から、神保町、東の小川町へと書店を列挙していく。なお、神保町以外の近隣書店は最後にまとめてある。
・最後に、主観をまじえた文ではあるものの、宣伝、利害誘導は一切ないことをここに記しておく。
 
アクセス
神保町駅東京メトロ半蔵門線都営三田線新宿線
九段下駅東京メトロ半蔵門線東西線、都営新宿線
 
神田神保町とはいうものの、神田駅からは少々遠い。中央線を利用の場合は、御茶ノ水駅から駿河台の坂を下ると神保町と小川町の境に到着する。
 
 
 
 
 

九段下から神保町の中国学系書店

〇松雲堂書店

専大前交差点の近くにある書店。漢詩文創作の書籍や詩語表、韻書に強い。自社出版物もその関係のものが多く、『詩語集成』や『史記会注考証』などのテキストの販売もある。太刀掛呂山『詩語完備 だれにもできる漢詩の作り方』は、こちらか後述の東方書店で買いやすい。
 
〇燎原書店
 新刊の中文書を売る書店。新古書も多い。中医学に強いが、古典の中文書も多い。新古書は背表紙に丸いシールが貼ってあり、半額セールを行うことがある。日本書は少ない。なお、専修大学の前にあるが、茶色のビルの二階にあり、少々わかりにくい。
 
〇山本書店
 古書、古典籍に強い。最近、古典籍の売り場が広くなってきた印象がある。研文出版はこの山本書店の出版部である。A1出口の前にあるので、結構印象に残る方も多いであろう。
 
〇通志堂書店
 中国アジア関連の本を扱う古本屋。靖国通りより北側に一本入った路地にある。向かいは、コスメショップで、六一書房の隣。恐らく、清代の納蘭性徳の号からこの名前になっている。非常に本が多く、かつ通路が狭い。在庫は、恐らく神保町有数であるほどなので、日本の古本屋か電話メールで事前に問い合わせるとスムーズ。しかし、比較的手に入りにくい本が安く手に入ることも多い。台湾の古本もよく扱ってくれる珍しいところでもある。また、店主の方がかなり本を教えてくださるのも良く、所謂、古き良き古本屋。
 
〇東城書店
 店舗というよりは事務所型の店。古典籍が非常に強いが、中文書も安く置いてあることが多い。全集ものは少し高めであるが、日本にあまり出回っていないものもある。注文は「日本の古本屋」のサイトで確認し、店舗で直接見たい場合は一言連絡するとよい。
 
〇内山書店
 新刊の中文書と日本書、またアジア関連の本を扱う。すずらん通りにある。東方の向かいにあるといってもよい。一階レジのうしろに新釈漢文大系や中華書局の正史、また、研究書が陳列されているが、その眺めは壮観である。三階には、古書もあり、中国共産党関連の本や古典関係が強い。
ちなみに、上海で、内山完造が魯迅をかくまったのは有名な話だが、内山完造の弟の子孫がいまは営んでいるようである。
 
東方書店
 すずらん通りを挟んで、内山書店の向かい、東京堂書店の正面にある。新刊は東方書店か内山書店で買うのが定番となっているが、積極的にSNSの宣伝を行い、また自社サイトの書誌情報はかなり質が高い。中国語で書かれていることもあるが、半分ほど日本語の情報や目次などが書かれていて、参考になる。店舗は、少し狭いが陳列がよく管理されている印象があり、店員さんも優しい。神田神保町の書店でもかなり入りやすいように思う。論文雑誌や同人誌も多く取り扱う。
 
〇光和書房
 店舗は、駿河台の交差点、事務所は白水社の正面にあり、事務所中心の店。店舗は日本書と古典籍が並んでいる。「日本の古本屋」のサイトには、中文書や台湾書も並んでいる。しかし、中国に在庫を置いているらしく、取引には時間がかかるとともに値付けは高めの傾向。
 

附:ワゴン


※「ワゴン」とは、店前や店の中でも入り口に置かれる特価本コーナーのことである。中国関係の本が特価で売られる場合は、大体ほかの分野を専門とする書店が販売することが多い。つまり、専門外の書籍なので特価で売るということである。
 
原書房
 もともと易占いや浮世絵を専門とする店だが、店前のワゴンや入って左側は、中国関係の本が置いてある。ワゴンには、シリーズもののバラや掘り出し物が多い。
 
〇誠心堂書店
古典籍と書が専門。白山通りを北上するとある。レトロな建物に店をかまえているが、千代田区文化財になっているらしい。また、店主の方は和本の扱い方の本を出されている。
 
日本書房
 白山通りを水道橋方面に北上するとある。隣に大きい駐車場があるので、それが目印。もともとは国文関係の専門書店だが、漢文学の本も充実している。ワゴンには、和本や漢文学の専門書が並ぶことも多い。たまにお店の猫と犬とがいる。
 
〇西秋書店
 白山通りを北上し、鯛焼き屋を左折するとある。日本書房とは親戚。ここも国文専門だが漢文学の本がある。ワゴンは、文庫本やシリーズものがおおい。
 
〇大雲堂書店
 神保町交差点の近くにあり、靖国通りに面している。茶色のビルにある。辞書がよく置いてある。中のレジ前には、漢文学関係の本が多い。
 
 
一誠堂書店
 神保町でも屈指の老舗。石造りの建物で、昭和初期に建てられたらしい。古書全般を扱い、漢文学東洋史、哲学も扱う。ワゴンは、シリーズものや文庫が多い。
 
〇澤口書店
 何店舗かあるが、靖国通り沿いの巌松堂ビルの店はよくにぎわっている。店前のワゴンは文庫、単行本、聖書、全集のバラなど幅広く扱っている。ただし非常に回転が速く、見逃すとすぐに買われてしまう。
 
〇東陽堂書店
 東洋史などの本が置いてあるが、ワゴンには、仏教書やバラの本も多い。
 
〇湘南堂書店
 すずらん通りにある。たまに流通が少ない本が安く売られることも多い。
 
八木書店
 靖国通りにある国文の書店。自社出版物や「ソッキ本」といわれる新刊のような古書のような本も売られている。
 
〇三茶書房
 文学、全集に強い。ワゴンには珍しい岩波文庫が並んでいることも。
 

附:神保町周辺の中国学系書店


〇琳琅閣書店
 本郷の東大の隣にある。古典籍に強いが、中文書も多い。店内の前にある格安コーナーは、安く一見の価値あり。しかし、現在(2023年10月)、ビルの改装中であり、今後店舗の様子がどうなるかは不明。
 
〇亜東書店
 中文書の新刊書店。内山や東方とは違う品ぞろえである。店舗もあるが、どちらかというと、ネットでの販売が中心。名古屋に支店がある。なお、昔は淡路町にあったが、今は上野と入谷の間にある。
 
〇五十嵐書店
 早稲田にある学術書や一般書を売る古書店。地下一階には、専門書がよく並んでおり、またネットにも在庫登録が多い。
 
〇鶴本書店
 ネット販売の店。在庫が多い。最近は、古典籍もよく売られている。
 
〇書虫
 ネット販売の店。新刊書を扱うが、ほかの新刊書を扱う書店よりもなぜか安く、早いのが特徴。
 
〇上海学術書
 ネット販売の店。大量に本を頼むと大口割引がある。またセールも多い。中国の古書サイトである「孔夫子」の本や学術論文も取り寄せをしてくれる。
 

附:神保町でうまく本を買うコツ


古本屋が多い神保町であるが、厳しい店主が多いというイメージを持つ方がいる。また少し独特な世界でもある。しかし、以下のことを守れば大丈夫である。
 
・キャッシュレスではなく、現金歓迎の店が多い。⇒現金主義なので、多めに持っていくとよい。ペイペイやカードは使えないところや一定額以上でないと使わせない店が非常に多いためである。
 
・日祝月に注意。⇒日曜、祝日、月曜は、休みの店が多い。理由は不明だが、多くの店がそうであるため、なるべく避ける。
 
・時間に注意⇒朝は10時から、夜は18時までのところがほとんどである。あまり夜遅くまでは営業をしないのは、神保町がオフィス街でもあり、夜は一気に人が減るからでもある。
 
・本を値切らない。⇒相場を守る意識の強い本屋が多いので、ある程度根拠がある。であるから値切ってはいけない。
 
・古本の来歴を聞かない。⇒どこから買い取ったというようなことは言わないのが古書業界のマナーである。また個人情報も多いためでもある。
 
・リュックは前に。⇒荷物がぶつかるのを防ぐためである。
 
・在庫は事前に調べる。⇒新刊書店とは違い、一点ものが多いので、事前に「日本の古本屋」のサイトや自社サイトで調べるとよい。
 
・トイレに注意。⇒本屋にいると、俗にいう「青木まり子現象」が起きるわけだが、神保町はトイレが少なく、用を済ませてから、買い物をした方がよい。
 

あとがき


神保町は世界有数の書店街であるが、カレーやラーメン、中華料理でも非常なる名店が多い。本書では紹介を省くが、本が入った重いリュックを背負いながら、どこで食べるかを考えるのは一興である。また、文化が馥郁としており、様々な業種の老舗があるのもよい。東京都心に通う学生よ、30分もあれば着くのに、このような特異な街にどうして行かないのであろうか。私は是非行って楽しんでほしいという一心でこの書を書いた。
2024年11月 記

識者の指摘を受け、一部を修正しました。2024年11月9日

著作者(私自身)により、「停雲日録」にも転載しました。2025年2月12日

 

漢詩の作り方(七言絶句を作る場合)

漢詩を実際に作る際に、困ることがいくつかあるかと思います。例えば、平仄や言葉が思い浮かんでこないという声はよく聞きますし、手順や思考法というたぐいの手引きが世の中でも数少ないように思われます。どの例も個人に拠るところが大きいのは明らかなのですが、方法論が多岐にわたるのは良いとしても、中級者くらいまでの人は、その多さにむしろ迷ってしまうことが多くあります。もちろん一つしか方法がなければ、非常に狭苦しいですが、漢詩を作るときは決まりきっていることのほかに、個人に拠っていることとがあり、両者の乖離がずいぶんとあります。また、世にある漢詩創作の手引書も、このあたりは手薄な感じが否めません。また、よく使われるのが太刀掛呂山氏の『詩語完備 だれにもできる漢詩の作り方』には、A4の紙が入っておりますが、その紙に割合詳しく作詩の手順が書いてあります。基本的には、その手順で良いのですが、かといって、一層簡単に、詳しく書かなければ、わからない人も大勢まだいるかと私は思ったのも事実であります。現状どう見ても、漢詩を作るハードルは高いわけですから、万人に広く、作る手順を受け入れていただくためにも、本記事を書く次第です。

 

【今回の詩(七言絶句・仄起式)】

冬日作」

冬日誰知歳月移

深藏篋笥散題詩

斜陽一照夕風滿

故宅橙黃犬吠籬

 

旧暦では春節前後ですので、春になるのですが、私の住む関東地方は冬の景色もまだありますし、冬に関する詩を作ろうと思い立ちました。ただ、旧暦は春の扱いですし、実際の肌感覚でも徐々に春の気が感じられなくもありません。新暦でもそろそろ二月ですし、冬から春へのちょっとした移り変わりを書いても良いと思いましたので、そのように題材を決めました。この段階では、大まかに決めればよいでしょう。

 次に、詩の形式を決めます。五言律詩か七言絶句で迷いましたが、律詩は、「頷聯」と「頸聯」と、いわば中間の二聯を対句にしないといけません。しかし、私はあまり良い対句のイメージが浮かびませんでした。ですので、まず、韻を決めます。もっと言えば、平水韻の平声の韻部の中から、候補を選びます。なぜ韻を決めるかといいますと、中国古典詩(漢詩)の近体詩では、韻を基本的にそろえるからです。「一韻到底」という言い方をしますが、この韻部を決めて揃えなければ、詩が成り立ちませんし、作るときも随分迷いが生じます。漢詩に細かい平仄式があることは、皆様大体ご存じでしょうけども、韻の選び方で書きたい詩の範囲がだいぶ変わります。ですから、韻を選ぶときは充分精査しましょう。ここで詩語表か韻書(『詩韻含英』など)、またはネットの「捜韻」などで、韻を探します。

ここで、検じ得たのが二つの韻部です。

 

1、四支 平聲 時 詩 知 枝 期 遲 之 奇 思 悲 絲 師 姿 池 離 移

2、六麻 平聲 花 家 華 斜 霞 涯 沙 鴉 茶 嗟 車 紗 槎 誇 加 麻

 

 1の「支」部は、時や詩、枝、移あたりが使えそうに思いましたために、選びました。一方、2の「麻」部は、「花」や「家」、「斜」あたりを使って、夕日が斜めになって、その中に花や家を書いても良いでしょう。

 ただ、今回は、景色や季節の移り変わりを書いてみたいがために、「移」や「時」がある「四支」に決定しました。やっと韻を決めたわけですが、対句はまだうかびませんので、七言絶句をひとまず書きましょう。

 

 便宜上、もう一回詩を示しますと、

 

冬日作」

冬日誰知歳月移(起)

深藏篋笥散題詩(承)

斜陽一照夕風滿(転)

故宅橙黃犬吠籬(結)

 

 であります。絶句の流れについても、「起承転結(起承転合)」とは言いますが、作るときはあまり意識しすぎないようにしましょう。唐宋詩の中で、「起承転結」の法則に合う詩はあるものの、当てはまらない詩も別に多くあります。元来、この言葉は唐宋より後の概念です。唐人、宋人ともにそのような概念はあるのか怪しいですから、句同士の流れと一句の辻褄とを合わせることの二つこそがより大事です。その二つを意識して、その流れの一つの在り方として、起承転結を見れば、おのずと適当な詩ができます。また、起承転結も誤解や解釈の幅がありますので、ここは今度別の記事で書きたいと思います。

 まず、結句の韻字を「支」部より決めて、下三字を決めていきます。ここで注意したいのは、七言は、「2、2、3」、五言は「2、3」が基本構成です。下三字は、この「3」のことであります。ここでよく使う字をなるべく避けるのも手です。後になって、起承句を作りたい時に困ることが私にもしばしばあるためです。そこで、「籬(まがき)」を選んでみました。用例や自分の記憶、詩想を探ると犬が籬に向かって吠える情景も良いと思いましたため、「犬吠籬(仄仄平)」にしました。ここで、全体の平仄式も確認すると、下記の仄起式の七言絶句を作ることになります。

 

【七言絶句_仄起式】

△●△○△●◎

△○△●●○◎

△○△●○○●

△●△○△●◎

 

 次に上の二字、二字を決めていきます。七言は四文字目だけが「孤平」になってはいけないために、三文字目は平仄どちらでもよい(一三五不論)ですが、三文字目も平にします。これで仄同士に挟まれずに、「孤平」を避けられます。冬景色を入れたいので、橙(柑橘類、オレンジ)が黄色くなっているという意味の「橙黃(平平)」と入れましょう。ただし、下三文字目とつながりが悪いために、上二文字をどうにかこうにか自然にして、真ん中二文字と下三文字とを上手く繋げないといけません。「籬」と「橙」とがありますので、家を連想しました。ただし、「家」は平ですので、仄字にあわせるように、「宅」にしましょう。「―宅」の語彙を考えると、「舊宅」や「故宅」が浮かびました。古びた家に柑橘があり、犬が吠えているのも良いと思いながら、あまりふだん使わない「故宅」を入れましょう。ここで、結句は「故宅橙黃犬吠籬」となりました。

 

 次に転句を決めます。ただし、七文字目は仄字でないといけません。意外と仄を覚えられずに詩を作っていましたので、少々考えます。今浮かぶのは、夕景色や田園の風景をどう書こうかということです。いったん、夕景色を書こうと想定しまして、冬の夕べの風は冷たくなりますし、「夕風滿(仄平仄)」としましょう。一応転句の挟み平は許容なので問題はありません。と、ここで少し迷い始めました。上の四文字と起承句とをどうしようかということです。そういう時は適当に当て嵌めて、後で推敲いたしましょう。夕陽を書きたいですが、「夕風」と出した以上「夕陽」は使えません。ですから、「斜陽」となんとか合わせます。ただし、「斜陽」は「平平」であるため、中の二文字には使えません。そのために、「一照(仄仄)」を選び出し、風や犬の吠える描写を強調する意図があります。ただし、「一」がちょっと気に食いませんが、後で直しましょうか。

 

 ここで、起承二句を並行して作っていきます。韻字を二句同時に決めて、交互に上を決めていくと綺麗に決まりやすいですし、字が不足することも避けられます。ここで早速「支」部の「移」を使って、景色の移り変わりを表したいところですが、あえて「支」部の「詩」を承句の下三文字にします。「詩」とすると、いろいろな三字が浮かびますが、用例の「散題詩(仄平平)」を使って、いったん起句の下三文字を決めましょう。「移」を使い、時間や季節の移り変わりを書きたいと思っています。ただ、冬の移り変わりを三文字で書くのは思い浮かばず、用例にある「歳月移(仄仄平)」と致します。ぐねぐねと交互に詩句をつくっていくために、起句の中二文字を決めた後、承句の中二文字、最後に承句の上二文字を決めて、起句の上二文字も埋めます。起句の中二文字は、自分でも不意に移り変わったという感じにしたいため、「誰知(平平)」としましょう。こうすれば、また「孤平」も避けられました。承句の中二文字は、「散題詩」に合わせなければなりません。ちょっと難しく思われましたが、「篋笥(仄仄)」とすれば、「いつのまにか、時間や季節が移り変わっていき、詩もたまっていった」という感じが生まれます。ここで、上二文字をしっかりと決めていきましょう。承句の上二文字は、「深藏(平平)」として、「篋笥(竹の箱)」の中に入れていたという句にしました。起句の上二文字も「誰知歳月移」に合わせて、「冬日(平仄)」としましょう。となると、

冬日誰知歳月移

深藏篋笥散題詩

斜陽一照夕風滿

故宅橙黃犬吠籬

 と出来ました。ただ、題名をどう決めるかといいますと、「冬日」のことなので、用例に合わせて、「冬日絶句」や「冬日詠懷」が浮かびました。ただちょっと虫の居所が悪いと感じたため、結局「冬日作」と致しました。

 

 これで、平仄を確認し、推敲をしますが、これもまた別の記事で方法を書きたいと思います。説明が長きに渡りましたが、少々説明しにくいところもありました。カンと言えばカンなのですが、ここを如何に説明するかが難議しました。

 

なお、通信講座もしております。ご希望の方はカテゴリより「漢詩創作_応募方法」から記事が一つありますので、そこからグーグルフォームを記入の上、送信してください。または、Twitterの@dufu_770 のアカウントにDMしてもらっても構いません。

 

2025年2月15日 一部訂正

2025年3月9日 一部訂正

 

 

 

 

応募方法(漢詩創作の指導)

リンク(グーグルフォーム)より、ご応募ください。

https://forms.gle/YL3WtTUJ8SCM3itC9

 

 自己紹介

講師の自己紹介

停雲(twitterは@dufu_770)と申します。関東在住です。号の停雲は、陶淵明の詩より採っております。東京にある私立大学の中国文学専攻を卒業しました。在学中より、南宋陸游を中心に、南宋中興詩壇といわれる楊万里、范成大なども含めて、中国古典詩の系譜を見ていきたいと思ってきました。これからは唐代宋代を中心に詩学の系譜をもっと広く見ていきたいと思っております。

好きな詩人は、やはり陸游です。他に杜甫、蘇軾なども読みますし、王安石、許渾、柳宗元、王漁洋も好きです。

好きな学者は、小川環樹、銭鍾書、小尾郊一、吉川幸次郎、莫砺鋒など。

趣味は、万年筆で詩や文章を書くこと、料理、食べること、音楽です。

 

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漢詩創作を指導するにあたっては、丁寧に、根拠を以て教えることを心がけています。その反面、漢詩は難しいところもありますので、噛み砕いて、優しく教えることをモットーともしています。

どうぞよろしくお願い致します。

 

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停雲通信9号目

漢詩の生徒さんに向けて、いつも「停雲通信」を発行しております。このブログでも、毎号とは言いませんが公開することもあるので、楽しみにしていて下さい。

 

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「書籍との付き合い方」

 漢詩を作り、読むうえで、書籍を読まなければならないことが頻繁にあります。むしろ、データベースやパソコンでの検索技術が上がったところで、実は紙の書籍を参照しては、読む必要性が増しているとさえ思うくらいです。

例えば、一に、人工知能が飛躍的に発展をしていますが、人文系かつ日本語の情報は相当不正確な記述が多いです。それは人工知能が参照している情報がそもそも善くない文献であり、選別の際のリテラシーも不足している点が挙げられます。ネットの情報は、結構いい加減であります。ただし、これはネットだからという話とは少し異なります。まず、人文系の情報を発信する人間が少なく、現在減少が加速度的に進行している事実もあり、どんどん更新されていくことが前提であるネットとはずいぶん相性が悪いです。また、今の人工知能はPDFを認識する能力も格段に上がりつつありますが、人文系の論文はとりわけ電子公開が進んでいないので、新しい知見も先行する研究も中々取り込みにくいのです。

次に、まず自分の頭で考えなければ、文学とは向き合えない点もあります。人工知能が自分の意図を正確に判断し、文章を表現できればまだ良いでしょうが、現状到底できません。その上に、自分で文学を志したとすれば、自分以外のモノを使うというのも奇々怪々です。多少頼るならば良いのですが、使う側がむしろ限度を知らなければ、本末も何もないでしょう。「酒を飲んでも飲まれるな、人工知能を使っても使われるな」であります。

 

 

 

 

 

「停雲日録(中国古典詩を読み、作る)」に改題しました

いつもご覧いただきありがとうございます。このたび名前を「停雲日録(中国古典詩を読み、作る)」に改めました。それにあたって、記事を全削除し、新たにスタートを致します。

 記事の内容は、漢詩創作から中国古典学へとわたるものになろうかと思います。また、漢詩創作の指導もしております。ほぼ通信指導なのですが、ご興味のある方はぜひご応募ください。

 

リンク(グーグルフォーム)

https://forms.gle/YL3WtTUJ8SCM3itC9

 

 自己紹介

講師の自己紹介

停雲(twitterは@dufu_770)と申します。神奈川県在住です。号の停雲は、陶淵明の詩より採りました。東京の私立大学の中国文学専攻を卒業しました。

南宋陸游を中心に、南宋中興詩壇といわれる楊万里、范成大なども含めて、中国古典詩の系譜を見ていきたいと思っています。

好きな詩人は、やはり陸游です。他に杜甫、蘇軾なども読みますし、王安石、許渾、柳宗元、王漁洋も好きです。

好きな学者は、小川環樹、銭鍾書、小尾郊一、吉川幸次郎、莫砺鋒など。

趣味は、万年筆で詩や文章を書くこと、料理、食べること、音楽です。

 

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漢詩創作を指導するにあたっては、丁寧に、根拠を以て教えることを心がけています。その反面、漢詩は難しいところもありますので、噛み砕いて、優しく教えることをモットーともしています。

どうぞよろしくお願い致します。

 

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今後もいろいろな記事を挙げていく予定です。漢詩創作のことや書籍の紹介、また漢詩の通信指導の案内やその他にもいろいろあげていきます。

 どうぞよろしくお願い致します。