杜甫の読み方・改訂
私は杜甫を厳密に読むとき、かなり特殊な読み方をしている。先日ツイートで紹介したが、反応があったので、改訂してここに再録する。
1、テキストは『宋本杜工部集』が望ましい。以前は続古逸叢書より1957年ごろに出ていたが、入手困難な上、価格が非常に高騰しているので、近頃出た国家図書館出版社の国学基本典籍叢刊が安くてよい。王洙らの二王本である。
2、『杜詩詳注』を見る。中華書局版が望ましい。ここで用例のアタリをつける。仇氏の解釈も確認する。厳密に読まない時はここで終わらせる時が多い。
3、詳注は、引き方がよくないうえに、間違いもあるので、杜甫以前の用例を再度確認する。他に「搜韵」などの電子索引で検索する。吉川幸次郎のように、『文選』の用例をみたいときは『文選索引』を引くこともある。
また杜甫自身の用例を確認することも非常に重要である。
※辞書を引くときは引くが、文脈からなるべく判断するようにして、あまり引かないようにする。
4、諸注を確認する。またテキストの異同も適宜見る。よく見る注は、詳注以外に、杜臆、鏡詮、読杜心解、銭注杜詩。入手しにくいが、宋人の注もよい。趙次公の注や九家注がよくつかわれるに思う(なお趙次公のは、上海古籍から復元されたものがあって、これは入手しやすい)
最近、『新刊集注杜詩(九家注)』、『草堂詩箋』や『王状元杜陵詩史』も点校本として出たので、参考にするとよい。
5、日本語の訳注で言えば、鈴木虎雄の杜甫全詩集、吉川幸次郎の杜甫詩注、講談社の全詩訳注がある。全詩訳注はテキストから解釈までを基本的に詳注からとっていて、前人の諸注も参考にしているので、非常に便利な書籍である。また、未刊行のところもあるが、吉川注を私は高く評価している。
・2023年9月17日 改訂